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借金家政婦は見た!『家出娘の巣窟での2ヶ月は地獄でした!』

告白者/杉野由佳(仮名) 60歳  家政婦紹介所勤務

春休み、夏休み、冬休み…長期の休みを利用して、どこからともなく湧き出す家出少女たちは、街の一種の風物詩となりつつある。警察庁の統計によると、1年間に補導される未成年者の家出少女・少年は昨年10年ぶりに増加して、前年比175人増の4536人になった。

家出少女を泊める男たちや家出サイトなどが氾濫している今、売春・窃盗・恐喝・薬物などの犯罪に手を染める少女たちがいる。それらのほとんどは、暴力団や地下組織が手引きしていると言われる。

今回取材したのは組織が用意した寮で家出少女の身の回りの世話をしていたという杉野由佳さん(仮名)だ。

「あの娘たち、本当に純粋。寄る辺もない子供たちを食い物にする大人たちを目の当たりにしました…」

今日は丁寧な口調でそう語る彼女が体験した壮絶な家出娘たちとの2ヶ月間をお聞きいただきたいと思う。

便器は汚れ、ゴミが積み重なる寮

「ゴオウラァァ!!どないして、甥っ子の借金返すんじゃ!!」

家政婦で細々と生計を立てる私が住む市営住宅の一室に、某広域暴力団の組員が乗り込んできたのは、昨年7月のことでした。ドライバーをやっている甥っ子が新手の《タクシー金融》で作った借金が150万にも嵩み、連帯保証人として名前を貸していた私のところへ取り立てにやってきたのです。

「甥がご迷惑をおかけまして!!」

「ほな、熟女のAVでも出演して金作ってもらおか!!」

「どんなことをしてでもお金はお返しいたします!」

畳に頭をこすりつけながら、私は屈強な男たちの前で土下座しました。その時です。そっと幹部の方から手が差し伸べられました。

「おばちゃん、ええ根性しとるなぁ。それに、振る舞いも上品や。よっしゃ、気に入った。おばちゃん、家政婦さんやってはったね?」

助け舟を出してくれたのは、幹部の森本さん(仮名)でした。

「は、はい。『津堂家政婦紹介所』でお仕事させていただいてます」

「ほうか。あんたを信用して、お願いしたい仕事がある。ある寮の家政婦をやってもらいたい。泊まりでな」

「炊事とか、洗濯とか……ですか?」

「そうや! ちゃんと働いてくれたら、しっかり借金返せるがな。何人かおる、子供の世話や。頼むわ」

子供の世話。この時はてっきりベビーシッターのようなお仕事だと思いました。でも実情は違ったのです。

休職届けを出し、翌日連れて行かれたのは、大阪の下町の小さなマンション。猥雑な街には飲み屋がたくさん立ち並んでいました。

「ここや!着いたで!」

森本さんと古いマンションに足を踏み入れます。ドアを開けると、食品が腐った臭いが鼻を突きました。

「な、なんなんですか? 森本さん、ここは…一体?」

「全寮制のいわば駆け込み寺というか、保護施設というか。まぁそんな感じや」

コンビニ弁当やペットボトル、カップ麺の残骸がうずたかく積み上げられた足の踏み場もないごみ屋敷。カーテンは閉めきられ、昼間だというのにほの暗いのです。そこには夜行性の猫のように目を光らせた少女たちが数人、息を潜めていました。

「この娘たちを管理してもらいたい。報酬は、月20万出す。ほとんど返済に回してもらうけどな」

「この子たちは?」

「家出娘やで。ウチの店やらで働いてもらってる」

収容人数は全4室で10人。年端もゆかない10代半ばの家出娘たちが得体の知れない仕事をしながら共同生活をしている。私は絶句しました。話を聞けば、ネットやスカウトを使って、集めた家出娘たちを一手に引き受け、援交や美人局などをやらせているらしいのです。でも…従わなければ借金は返せない。私は決意し、まず部屋の掃除をはじめました。

食器があふれる台所、便がこびりついたトイレ、水垢とカビが床や天井を覆うお風呂場…。彼女たちに《掃除》という概念はないようです。1日かけて何とか人が住める環境を整えましたが、その日から私たちの哀しい日々が待っていたのです。

少女たちの嫌がらせ、打ち解ける心

まず知ったのは規律の厳しさでした。一例をあげますと、

①タバコや酒は没収

②買い物などでスーパーへはいかない(近隣の主婦などは、子供がマンションに出入りしているなどと敏感なのでバレやすくなる。行くならコンビニ)

③薬物禁止

④彼氏には電話しない(絶対にこの寮のことを話してしまうため)

⑤ホスト遊び禁止(仕事が終わった後に夜の街をふらつかない)

⑥休暇は週2日だけ

⑦mixiやモバゲー禁止(ブログなどに家出や共同生活、仕事の話などを書き込んでしまうため)

⑧2日に1度は、親に電話かメールを入れる(心配して、捜索願を出さないようにするため)  etc…

これを徹底させなければ、警察に目をつけられる確率が高くなるらしく、「絶対守らせてくれ!」と森本さんから何度も念を押されました。

彼女たちの援交の仕事はお昼と夜からの2班制。迎えの車に乗り込み、男たちに体を売るのです。その他には偽造免許証を使ってのヘルス店での仕事、2階を使った《ちょんの間》と呼ばれる売春スナックでの仕事などです。

私が共同生活に加わった夜。同じ部屋にみんなを集め、そうめんを作りましたが、誰も箸をつけてくれませんでした。みんなお菓子でお腹を満たしながら、買い与えられたニンテンドーDSやテレビゲームなどに夢中。育ち盛りの体なのに、これでは栄養が偏ってしまいます。

「みんな! 一緒にご飯食べようよ! おばちゃん、作ったから!」

「ウザッ…」

当然の反応です。突然、うるさそうな中年女が同居してきたのですから。でも、負けてはいられません。毎日、おいしいものを人数分作って気長に待ってみようと思いました。次の日はハンバーグ、また次の日はオムライス。誰も食べてくれない料理を作りながら、数日経った頃でした。私の作ったエビフライの皿に使用済みのタンポンが並べられていたのです。

「これをやったのは誰? 聞いているんですか!」

「やかましいなぁ、オバハン…」

うんざりした顔でそう言ったのは、みんなを引っ張るリーダー格のユミちゃん(17才)でした。

「食べ物を粗末にしちゃダメ、絶対! おばちゃんに嫌がらせするなら食べ物以外でやって!」

そう言い放った私を、みんながニヤニヤと見つめていました。

次の日からは、私の荷物がマンションの上階から投げ捨てられ、ベランダに出ると内鍵をかけられ、寝ている間にバケツの水を浴びせられたりしました。叱るようなことはしません。こんなことはつまらないと思ってもらえるまで、耐えることが一番いいのです。

こちらが耐えている姿をみせると、めっきり嫌がらせが減りました。でも、やはり食事は摂ってもらえず、コンビニのおにぎりやインスタントラーメンを食べています。それから3週間。栄養不足を心配していた矢先、マリちゃん(16才)が高熱を出しました。病院に行くことはできないので、布団へ寝かせていたのですが…。

「うわっ! マリがトイレの中でゲロまみれになってる!!」

エッ!!トイレに飛んでいくと、マリちゃんは吐瀉物にまみれて気を失っています。私は、彼女の体を抱きかかえ、部屋へと運びました。

「うげぇぇ…ゲロだらけの体、よう触るわ…」

私は、そう言ったユミちゃんの頬を思わず平手で強く打ちました。

「なんてこと言うの!友達が苦しんでるのに!!仲間でしょ、大事な!心まで荒んじゃダメよ!!」

私は泣きながら訴え、優しく丁寧にタオルでマリちゃんの体を拭いてあげました。そんな時、他のみんなが心配そうに身を寄せてきたんです。新しいタオルを持ち寄り、交替で看病することになりました。みんな、実はいい子だったんです。それからというもの、みんなはちゃんと席に着き、仕事に出ている子以外は一緒に食事をするようになりました。

少女たちの悲しい境遇、性病トラブル

みんなで食卓を囲んでいると様々なことがわかります。

「…おいしい。こんなん、家で食べたことない」

煮魚を口に入れて、ボソッとエッちゃん(15才)が呟きました。

「お母さんは、作ってくれないの?」

「ウチのこと、面倒看てくれたことなんてないから…」

彼女はネグレクト(育児放棄)の家庭で育ったようでした。離婚して母親に引き取られたのですが、男の人ができてからというもの食事も与えられなくなったというのです。

「アタシは、自分で作ってたで! 夜は親父と2人っきりやから…」

マーコちゃん(16才)のお母さんは、水商売で家族を養っているらしく、夜は義父と2人きり。父親は母がいない隙に、マーコちゃんにセックスを強要するらしく、正直可哀想で聞いていられませんでした。

「私は、児童養護施設から逃げてきたんやけど、みんな食べ物の取り合い。ちょっとでも遅れると、全部食べられてるし。こんなにゆっくり食事するんてええもんやね」

リナちゃん(15)は、お母さんから6才の時に背中に熱湯をかけられ、ヤケドの跡が少し残っています。10才で施設に引き取られて、そこでの生活に耐えられず、度々脱走を繰り返しているようでした。みんな幼いときに、辛い体験をし、孤独感の中で苦しんでいたんです。

みんな家族と思おう。縁があってここに集まってきたんだから。辛いことがあっても乗り越えられる!」

そう言うとみんなキラキラと目を輝かせ、私を見つめていました。その顔はやっぱり純粋な少女の顔です。翌日から、私のことをみんなは「お母さん」と呼ぶようになっていました。それからは、充実した共同生活。しかし、少女たちがおこなっているのは、売春。トラブルが起こらないはずがありません。

「ゴオラァ!! 何で黙っとった!!」

玄関へは入るなり、ドライバーの若い組員に突き飛ばされたリョーコちゃん(15才)。

「ど、どうしたんですか?」

「このクソガキ、ヘルペスに感染してたのに黙って仕事してたんや!! お得意さんからクレームがでたんや!病気うつされた、言うて!!」

「だ、大丈夫?いつからだったの?」

「1週間くらい前。オシッコするのが痛くて…」

彼女は実費での医療費を借金として背負わされ、昼も夜も休まずに働くことを誓約させられていました。子供たちをがんじがらめにして、この世界から逃げられなくする。それが暴力団のやり方なのでしょうか。やはり、こんな仕事にはリスクが付いてまわるもの。その最悪のケースが妊娠です。

私がこの寮の世話をはじめて、1ヵ月半が過ぎた頃、一度手を上げてしまったユミちゃんのお腹がポコンと膨れていることに気がつきました。

「ユミちゃん…ひょっとして、そのお腹…」

「えっ、何でもないよ、お母さん」

「でも、Tシャツの上からでもわかるよ、お腹が」

「………」

「どのぐらい経ってるの?言ってちょうだい!」

私のその言葉に、ユミちゃんは顔をぐしゃぐしゃにしながら泣きはじめました。いつもはつっぱっているのに、気持ちの糸が切れたようです。

「ウ、ウチ、どうしたらいいのか、わからんかって!!」

「早く、病院に行かないと!!」

私が付き添って産婦人科へ行くと、もう22週を過ぎてしまっていて、中絶もできない状態でした。

「ガキがガキ産んでどうするんや! 何でゴム付けささへんのじゃ!」

森本さんはその話を聞くと、突然ユミちゃんのお腹を蹴りました。な、なんてことを……。

「ご、ごめんなさぁぃぃ!! 殴られるから、客に!!」

「じゃ、何のために俺ら用心棒がおるんじゃ!!」

「でも、呼べば用心棒代って言って、また借金させられるし!!

何でもかんでも借金を負わせる。酷いやり口でした。暴力は、容赦なくユミちゃんを襲います。私は、身を挺してユミちゃんを庇い、叫びました。

「もう子供扱いしてあげて!これじゃ、みんな地獄じゃないですか!!」

「家に帰してしまえ」

私を見て、森本さんはそう冷たく言い捨てたのです。次の日、彼女はそのまま家へと帰りましました。泣きながら「イヤだ、イヤだ」と駄々っ子のように帰途につく彼女。家は厳格な家庭。冷徹な父に、他人扱いする後妻。彼女が怯えるのも無理はありません。

突然の別れがやってくる

2ヵ月後、仲の良い毎日を送っていると、森本さんが突然やってきて、こう言いました。

「甥っ子が金返すことになったで。よう頑張ってくれたな、おばちゃん」

えっ!私は驚きました。甥っ子が戻ってきたことよりもこの娘たちと突然別れることになることに、です。

「ちょっと待ってください! もう少し!もう1日だけ!」

「けったいな人やなぁ。やっと解放されるのに……。1日だけやで

「ありがとうございます!!」

その日の晩は、腕によりをかけたご馳走を作り、みんなで川の字になって寝ました。私が明日いなくなることなんて言えるわけがありません。ゴメンね、みんな…。夜中のうちにコソコソと起きだした私は涙を流して次の日のためにみんなのお弁当をこしらえました。

それから身支度をし、私は子供たちと置手紙を残し、ひとり出て行きました。後ろ髪を引かれる想い。ありがとうね、本当にありがとうね…。あの子たちは、ちゃんと家に帰ったんでしょうか? それだけが今でも心に引っかかっています。

寮での出来事は辛いことばかりだが、少女たちとの想い出を語る彼女の顔は本当に幸せそうだった。やりきれない想いで寮を去ったに違いない。彼女は最後にこう締めくくった。

「かけがえのない一度きりの人生の春。様々な事情があるのかも知れないけれど、老婆心ながら一言言わせていただければ、“ひと夏の体験”と言って終わらせてしまうには少し哀しすぎます。家出は地獄の入り口。思いとどまってほしい」

目頭を熱くした杉野さんの優しい想い。家出をする子供たちにぜひこの事実を知ってもらいたいものだ。(了)

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プロフィール

丸野裕行

1976年京都生まれ、佛教大学中退。株式会社オトコノアジト代表取締役。ライター、作家、脚本家、イラストレーターとして雑誌や書籍に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。Amazonで著書30冊以上出版、ガジェット通信ライター、『初めての不動産投資マガジン』編集長、京都No.1配布率のタウン誌『京都夜本』でコラム執筆中。文化人タレントとして『サンデージャポン』(TBS)、『ダラケseason14』(BSスカパー)、『じっくり聞いタロウ』(テレビ東京)、『EXD44』(テレビ朝日)、『雨上がりのAさんの話』(朝日放送)などのTV出演などで活動。


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