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年間膵炎で5回入院する入院マニアライターが語る『病院のグルメ』

突然の激痛

「痛ててててぇぇぇぇ!な、何これぇぇぇげげげげぇぇ~」

突然、胸を焼けた金属の菜箸でかき回されたような痛みが襲ったのは、打ち合わせの席で仕事の関係者と大酒を飲んだ日の夜だった。

そのまま気を失い、意識が戻ったときには顔にチラチラと赤色灯の明かりが差し込んでいた。救急車から担架で運ばれ、救急の診療室の台の上。

ん、病院か?

どうも近所にある京都の総合病院に連れてこられたらしい。

医者からは、そのまま緊急入院しろという強制的な言葉。尿検査と血液検査、CT、レントゲンを撮っても、その病名であることは明白だった。

病名は、急性膵炎(きゅうせいすいえん)。

炎症性の高熱が2日間続き、血液の水分が普通の3分の1になっていたようだ。

そう、チュートリアルの福田さんや中川家の剛さんなど数々のお笑い芸人が入院したあの病気だ。

ライター・丸野裕行、39歳の春。

このあともこの病気が続き、長い付き合いになるものとはこのときはまるで考えていなかった。

しかし、同時に病院食の旨さに目覚めるキッカケになった。

≪膵炎(すいえん)とは≫

あまり世間では知られていない膵臓というのは、人間が生きる上でかなり重要な働きをしてるという。

その膵臓が炎症を起こしてしまう膵炎には急性膵炎と慢性膵炎というものがあります。毎年この病気を発症する患者数は増え続けているらしいのだ。

≪膵臓(すいぞう)とは≫

膵臓は胃と十二指腸の間にあり、胃の裏側にひそむタラコ型の臓器のこと。

長さ14~17㎝、横幅は3~5㎝、厚さは2~3㎝ほどの大きさです。

その膵臓がこなす仕事はふたつ。まずひとつ目は膵液の分泌。

膵液というのは、タンパク質を溶かすトリプシンとアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼなどの酵素を吐き出します。

口に入れた食べ物が胃から十二指腸運ばれたときに、膵液はスプラッシュマウンテンの如くドバァ~っと放出!

膵管を通って十二指腸に分泌されるのだ。

消化・吸収という大きな役割を膵炎は果たしている。

ふたつ目の役割はホルモンの分泌。

膵臓には、血糖値をあげるグルカゴンと血糖値を下げるインスリンを分泌して血糖値を正常にする働きがある。

膵臓が弱まるとホルモン分泌のバランスも崩れ、糖尿病にまで進んでしまいこともあるようだ。

≪急性膵炎というのは≫

膵臓で作られた膵酵素が何らかの原因で膵臓自身を消化したり、周辺の臓器に障害を起こして炎症を起こしまくる病気。
原因のほとんどがアルコール摂取と胆石。男性の発症率は、女性のなんと約2倍!いかに男がアルコールに拠り所を求めているのかがわかる。
さらに急性膵炎の症状が慢性化したのが慢性膵炎。

最悪の状態、絶飲食が3日間

緊急入院したのはいいが初めての入院生活。

どう過ごせばいいのか…どう入院生活を送ればいいのか…。

もうはじめてのおつかいぐらい、ドキドキハラハラ。

それに、いくら痛み止めを使っても、体中が痛すぎて、眠れもしない。

特にみぞおちのあたり、背中、左肩の痛みがひどい。それに、おぞましいほどの吐き気と嘔吐が波状に襲ってくる。

ゲロの波状攻撃は、眠るどころの騒ぎじゃない。

これは、膵臓の炎症で、腸の働きが悪くなるのが原因。

さらに消化・吸収が悪くなり脂肪便というものが噴出する下痢の症状に悩むことになる。

発熱は39度以上。不思議と食欲はない。

体はダルダルで倦怠感もあり、なにもやる気が起きない。

1日4リットルの点滴(栄養剤、水分補給剤、抗生物質、タンパク質分解酵素阻害薬、鎮痛薬など)をしながら、長い夜と果てない絶望感に枕を濡らす男39歳妻子持ち。

入院したその日のうちから膵液が出ないように絶飲食になるのだが、まったく食欲は出ない。

大好きな『孤独のグルメ』をパソコンのアマゾンプライムで何気なく流しているのだが、まったく興味もわかないのが不思議だった。

井之頭五郎がタイ料理を食おうが、刺身を食おうが、焼肉を食おうが、それらがすべて俺の食欲には響いてこない。

それよりも、みぞおちあたりに居座る岩のような痛みが勝る。

それが、1日、2日、3日と続く。水すら飲めない日々だが、なんだか点滴を入れられると喉が潤う気すらしてくる。

そして運命の4日目。痛みも引き、体調も万全。

担当医師から水か、ポカリ、お茶を飲んでもいいというお達しが出る。

医師からは、今回の急性膵炎の場合、約3週間ほどの入院が必要、絶対安静にしろとの説明があったのだが、そろそろ仕事の虫が騒ぎ出すころだった。

腹が減りすぎて幻をみる

冷蔵庫に一応入れておいた4日ぶりに口にするボルヴィックはやけに冷たくて、旨い。

吐き気が出るので、入院前の2日間も水すら口にできなかった。

ということは、計6日間も口から水分を摂っていなかったことになる。

とにかく水というだけで旨い。軟水がスカスカの赤レンガのようになった胃壁に吸い込まれる感じだ。

点滴の機器を押しながら、次の水分を自販機に求めに行く。

見つけたのは、アイソトニック飲料の名手・アクエリアスだ。

病室に戻り、震える手で焦りながらキャップを外してしまったので、ベッドの下にキャップが吹っ飛んでしまった。

まぁいい。一度舌なめずりをしてから、一口含む。甘い。ひょっとして、スピードワゴンの小沢さんのどんな言葉よりも甘いんじゃないのか。

これの糖度は?

「どんな品種改良したらこんなに甘くなるんだ!」と思わず糖度計で測りたくなるくらい甘くて、酸っぱい。

そんなとき、何気なくパソコンから垂れ流されていた『孤独のグルメ』の黒天丼の映像に、俺のニュートラルだった食欲が突然一速にシフトチェンジした…。これが食いたいぃぃぃぃぃぃ~!!

それからは同部屋の入院患者の食事の時間が地獄だった。

「うえっ、またサバの味噌煮か~」という言葉とその匂いが、鼓膜と鼻孔の奥へ侵入してくる。

うぐぐぐ…。

いつもなら何でもない料理が、自分の手に届かない遥かシルクロードのように遠い所にある。

深夜になれば、さらに眠れない。

釘付けになるのは、『深夜食堂』や『めしばな刑事タチバナ』などのグルメドラマの数々。

それを観ながら、何かに憑りつかれたかのように、スポーツドリンクをグビリ、グビリ。

処方されたフオイパン錠やガスター錠などもお菓子がわりにごくり。

様子を見にくる看護師さんが食べ物を運んできてくれるという幻覚まで見るようになる。どうかしとるわ、まったく。

4リットルの点滴に、気が付いてみれば、3リットルのスポーツドリンク。

瞬く間にあふれそうになる尿瓶。

どのくらいの尿が出ているのか、膵臓がどれほど水分で浄化されているかをチェックしなければならない。痛みの次は、尿意で睡眠不足になるハメになった。

空腹と闘う中、突然絶食期間が終了する

絶食7日目。

人間というのは腹が減りすぎると、やはりおかしくなる。

病院で原稿を書きながら、パソコン脇に積み上げた資料がふんわり触感のヤマザキダブルソフトに見えてくる。

「あ~なんか食べたい!」「口に入れたい!」という気持ちを無視するかのように熱があがり、またまた絶食期間が長くなる。

水太りになる体。

個体を欲する頭と胃が妻が飾ってくれた一輪の花に集中する。

「君は花を食う気か~!そんな風になったら人としてダメだ~!」と理性が学生運動のトラメガのように大声で反発する。

だが、そんな孤立無援の戦いを小さなベッドの上で繰り広げているうちに、朝の回診で先生がやってきて、「丸野さん、そろそろ食事はじめてみますか?」とか細い声で言った。

「やった!!」と全裸で絶叫しながら病院中を駆け回りたくなる気持ちを抑え、「はぁぁあ~もうはじめますか?」と寝とぼけたような声で返す俺、大人!

初めてのごちそう…なんじゃこりゃ!

仕事も手につかなくなるのだが、やはり肉や油物が食べたいという期待度MAXで食事の時間を待つ。

その時間を待つ首の長さは、おそらくキリン8頭分くらいだろうか、ろくろ首3人分くらいだろうか。そんな想いで、昼食までの3時間はまた別の地獄だった。

「丸野さん、お食事お持ちしましたよ~!」と、いつもより天使に見える40代後半の太った看護師さんは実にCuteだ。

で、出てきたごちそうがこれ!なんだ、こ、こ、これは!!

目に飛び込んできたのは、重湯とお味噌汁とオレンジジュースと…って、また水分かよ!

再び広がる大海原!

激しい尿意必至!

どうすんの?いつになったら固形のものが食べられるんだよ!

ここから、俺の病院食グルメ道がはじまった。(続く)

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プロフィール

丸野裕行

1976年京都生まれ、佛教大学中退。株式会社オトコノアジト代表取締役。ライター、作家、脚本家、イラストレーターとして雑誌や書籍に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。Amazonで著書30冊以上出版、ガジェット通信ライター、『初めての不動産投資マガジン』編集長、京都No.1配布率のタウン誌『京都夜本』でコラム執筆中。文化人タレントとして『サンデージャポン』(TBS)、『ダラケseason14』(BSスカパー)、『じっくり聞いタロウ』(テレビ東京)、『EXD44』(テレビ朝日)、『雨上がりのAさんの話』(朝日放送)などのTV出演などで活動。


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